森林大国の日本ですが、林業においては従事者の減少や少子高齢化などの問題 で低迷を続けています。そこで、林業にドローンを導入し、低コスト・省力化 につなげる取り組みが始まりました。ドローンの活用方法と今後の林業に与え るドローンの可能性について説明します。
林業従事者の減少や高齢化により衰退した日本の林業を、ドローン導入で活性化させる動きが始まっています。実際、林業でドローンはどのように活用されているのでしょうか。
今回は、厳しい山の地形で活躍するドローンの活用方法と、今後期待されるドローンの活用方法について解説します。
林業へのドローン導入で苗木運搬や森林調査の負担を減らす
林業にドローンを導入すると、苗木運搬や森林調査の負担が大幅に低減します。 以下、2つの具体例とともに解説します。
1.苗木運搬
労力と時間を費やす苗木運搬は、ドローンを導入することで省力化が可能です。 苗木運搬は、人が重い苗木を運んで戻るの繰り返し、または架線集材で運ぶのが一般的です。林道があればフォワーダで運べますが、植栽ポイントまでは人力に頼るほかありません。
林野庁では、和歌山県田辺市や日高川町、群馬県東吾妻町、宮崎県延岡市の各地でドローンによる苗木運搬の事例を発表しています。各現場の傾斜は30度~45 度、運搬先までの比高は25~251m、水平距離210~540mと山地形の差があるなか、200~600kgの苗木を137分~227分、往復21~55回で運搬することが可能になりました。(バッテリー交換の時間を含む)[注1]
こうした苗木運搬でドローンを導入することによって、人員の削減や作業の省力化につながります。また、自動開閉フックとウインチ付きのドローンであれば、操縦者一人だけで作業が可能です。
日本の林業では、主伐後の造林は費用と人力の負担が大きいといわれています。 主伐面積に対する再造林の割合は低く、3~4割程度です。ドローンの導入によって造林の負担が軽減し、急傾斜地での苗木運搬が進むことが期待されています。[注1]
2.森林調査
ドローンを導入することで、省力化・簡素化しつつ精度の高い森林調査が可能です。
ドローンで撮影した画像をオルソ補正することにより、杉とヒノキの判別が目視できます。高画質の画像でリモートセンシングできる点は、大きなメリットです。
また、マルチスペクトルカメラで樹木の活性度を表し、松くい虫やナラ枯れの枯損木調査にも活用可能。オルソデータとマルチスペクトルデータに3Dデータを加えた3点によって、精巧な樹種判別が可能です。林地台帳や立木売買に必要な、事前調査資料作成や材木量の把握にも役立ちます。
林野庁のスマート林業実践対策では、石川県、長野県、山口県、熊本県でドローン導入による資源量の把握と、伐採前における森林調査の費用削減などの成果が出ています。
石川県を例にとると、時間と労力が必要だった境界確認において、17%の作業日数が削減され、費用においては10%の削減が実現できました。[注2]
長野県では、毎木調査に110万円かかるところ、ドローン導入による調査・解析で70万円に削減されています。人力効果においては、32人が6人に縮小される結果が出ました。[注2]
ドローン導入で予想される今後の林業
林業におけるドローン導入の余地はまだまだあります。
ここでは、植栽穴のマーキングと土砂災害後の緑化を例に、ドローン導入で予想される今後の林業について解説します。
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ドローンによる植栽穴の自動マーキング
ドローンによる植栽穴の自動マーキングは、国内での実用が期待されているドローンの活用方法です。ドローンを使用した植栽穴の自動マーキングについては海外で利用されており、イギリス、スペイン、カナダで活用実例があります。
一方日本での活用実例は、北海道でドローンによる植栽プランニングを実施しただけにとどまっています。植栽穴の自動マーキングの実証はあるものの、現場での活用には至っていません。
現在の植栽プランニングや植栽作業時の位置決めは、経験者の勘に頼ったり、多大な人力を必要としたり、現場に任せているという課題が残っています。
なお、ドローンの導入によって可能となることとしては、以下が挙げられます。
- 植栽地の撮影
- AIによる画像判定で3Dマップを作成
- 植栽地へ行かなくとも、地形を考慮した植栽地の区分けと植栽列を作成
現場の厳しい地形や伐根などの障害物の判定が速やかに行われるため、林業従事者の作業負担の軽減につながるでしょう。
また、植栽プランニングと薬剤散布などの技術にドローンを導入すれば、植栽穴の自動マーキングが可能です。今後の林業への応用が期待されています。
ドローンによる土砂災害後の緑化
播種・吹付の技術を応用して、今後はドローンによる土砂災害後の緑化に役立つ活用方法が重要視されています。海外では、大規模な森林火災後の復旧に有効活用されています。
近年の異常気象による豪雨や、地震で引き起こされる土砂災害後の緑化は、二次被害や急こう配地における作業などがあり、危険をともなうものが多いです。
ドローンを活用した播種・吹付は、作業の安全性を確保できるうえ、必要となる人力も最小限で済みます。
しかし、国内での事例はいまだ少数なのが現状です。
数少ない実施のひとつが、2018年に大規模土砂災害が発生した広島県呉市で行われた、ドローンを使用した災害地の緑化プロジェクトです。時間・労力・費用の削減や作業員の安全、日本古来の植物生態系の保護などに効果がありました。
今後はさらに、播種前の播種位置特定と播種後の育成状態の観察なども、ドローンの活用方法として期待されています。
林業にドローンを導入して低コスト・省力化
林業は過酷な労働に加え、従事者不足や高齢化といった課題が多い業界です。しかし、ドローンを導入することによって、林業の低コスト化と省力化を可能となります。
今後は林業の現場に適した、より安価で安全性の高い、ユーザーフレンドリーな機体の開発も見込まれています。ドローンの導入が進むことで、さらに林業の業務効率化や費用削減が進んでいくでしょう。
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[注1]林野庁:造林のためのドローン活用事例集[pdf] https://www.rinya.maff.go.jp/j/kanbatu/houkokusho/attach/pdf/ houkoku-11.pdf
[注2]林野庁:スマート林業実践対策の取組事例[pdf] https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/smartforest/attach/pdf/ smart_forestry-17.pdf
監修者
森本 洸生(もりもと こうき)
株式会社 drone supply &control (ドローンエバンジェリスト)
<略歴>
中学生の時に国土交通省の全国包括申請許可取得し、鹿やイノシシによる農作物被害を守る害虫駆除のプロジェクトに参画するなど、若い世代のドローン第一人者。現在では様々なドローン事業に参画するなど多方面で活躍中。
<所有する資格>
- DJI CAMPスペシャリスト
- DJI CAMPインストラクター
- DJI CAMP ENTERPRISEインストラクター
- 無人航空従事者試験1級
- CRPI公認指導員
- 総飛行時間400時間以上