19世紀の産業革命を上回るドローンの進化には目を見張る物があります。
これまでドローンで行うことといえば「空撮」が一般的でしたが、国がドローンの社会実装を進めていることもあり、様々な業務においてドローンの利活用が急速に進んでいます。
しかし、そうしたドローンの需要が高まる一方で、”空の安全”についての懸念も増大しています。
昨年、新たに【ドローンの国家資格】と【機体登録】と呼ばれる2つの制度がスタートしました。
まだドローンを飛行させる際に国家資格が必須ということではないため、こちらはレベル4飛行をはじめとする難易度の高い運用を行う方向け・ドローンのスキル証明として取得したい方向けになっています。
しかし機体登録に関しては、ドローンを使用するほとんどの方にとって必要な手続きになりますので、本記事では「機体登録とは何か」「リモートIDの搭載方法」などについてご紹介していきます。
空の安全を確保する非常に重要な事柄ですので、最後までお付き合いください。
※本記事は2023年7月時点の情報を記載しております
リモートIDとは
リモートIDとは、ドローンの機体情報を電波で遠隔発信する装置のことです。
ドローンに搭載することで、万が一事故が起きた際にも迅速に原因究明をすることができ、無人航空機が更に安全に安心して飛行できるように設けられた制度の一つです。
これまでドローン関連の規制と言えば200g未満の機体は対象外であることがほとんどでしたが、航空法が改正され200g未満→100g未満に引き下げられたのでご注意ください。
(一部のトイドローンを除き、国内で出回っているほとんどのドローンが対象になると考えていただいてOKです)
リモートIDにより無人航空機の識別情報を電波で遠隔発信することで、飛行中のドローンの存在や行動をリアルタイムで把握し、何かトラブルが発生した際に適切な対応を取ることができるようになります。
イメージとしては、自動車のナンバープレートのようなものです。
きちんとドローンにリモートIDが搭載されていれば、事故を起こしたドローンを調べることがスムーズになりますし、「いつどこのエリアでどんな機体が」トラブルに見舞われたのか把握することも容易にもなります。
▼これまでルールでは機体の特定が難しいといった課題が
なお、一般ユーザーが登録記号をもとに国交省へ問い合わせをしても、「あのドローンは誰が飛ばしているのか?」といった個人情報は開示されません。
“レベル4飛行”が解禁されたこともあり、今後日本の空にはますますドローンが飛び交うことになるでしょう。
ドローンの性能は年々向上しているとはいえ、こうしたルールの整備はとても重要ですね。
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ドローンの機体登録制度とは?
リモートIDの搭載義務
先述した通り、リモートIDの搭載義務付け搭載範囲は、原則として100g以上の全ての無人航空機が対象です。
リモートIDの搭載義務を怠って飛行させた場合、50万以下の罰金または1年以下の懲役が課せられる場合もあるので必ず搭載するようにしましょう。
近年、ドローンの利用が急速に拡大していることもあり、各操縦者の判断に委ねられていたような部分もきちんと整備していこうというフェーズに入っています。
これまでは”やったほうがよい”という位置づけのルールも数多くありましたが、リモートIDに関しては「任意」ではなく「義務」とされていますのでご注意ください。
リモートIDの搭載が免除される場合
リモートIDの搭載は義務だとお伝えしましたが、一部搭載が免除されるケースも存在します。
次の内容に該当している方はリモートIDを搭載する必要がありません。
★機体登録制度がアナウンスされた後、2022年6月19日まで事前登録期間が設けられました。
この期間中に登録された機体についてはリモートIDの搭載が免除されており、登録記号をシールなどで機体に明記することで飛行が許可されます
1:リモートID特定区域で飛行
リモートIDを搭載していないドローンを飛行させる範囲を明確にし、事前に届け出をした場合は、リモートIDの搭載が免除されます。
しかし、どこのエリアでも届け出をすれば飛行させられるわけではなく、下記の条件を満たす必要があるのでご注意ください。
① 監視のための補助者の配置とその他の措置
リモートIDを搭載していないドローンが届け出をした飛行範囲外に出てしまうことが無いか、周囲に別のドローンがいないかといった確認を行うことが目的です。
安全確保のために補助者を配置しましょう、ということになります。
② 範囲を明確に示すための標識の設置とその他の措置
第三者が見ても、どこが届け出をした区域なのか分かるようにすることが求められます。
2:係留飛行を行う場合
届け出た区域の上空で必要な安全確保措置を講じて飛行する場合も、リモートIDの搭載が免除されます。具体的には、長さ30m以内の十分な強度をもつ紐などで係留して飛行する場合です。
市販されているドローン係留リールで対応できますが、長さは30m以内と決められている為、空撮用途などにはあまり向いていません。
機体性能の検証や、実証実験向きの措置といえます。
リモートIDによって発信される識別記号
機体登録を行うと”登録記号”と呼ばれるものが発番され、この番号を機体へ表示する必要があります。
事前登録期間に登録を行ったリモートIDを搭載しないドローンに関しては表示のみで問題ありませんが、事前登録期間終了後についてはリモートIDを搭載し、識別記号を電波で遠隔発信するようにしなければなりません。
このリモートID内には無人航空機の製造番号や登録記号、飛行時の位置、速度、高度、時刻などの情報が記録されており、1秒間に1回以上発信されます。
(操縦者の個人情報等は含まれませんのでご安心ください)
リモートIDの種類
リモートIDには、「内蔵型」と「外付け型」の2種類があります。
基本的にリモートIDの制度がスタートする前に製造されたドローンは外付け型で対応する必要がありますが、ファームウェアのアップデートで内蔵型に対応しているものもあります。
どちらに対応しているかはメーカーやドローンにより異なりますので、ご自身で保有されているドローンへの搭載方法は事前に確認しておく必要があります。
リモートIDを搭載する方法
まず、ご自身のドローンの登録要件を確認し必要な手続きを行います。(機体登録)
▼以下のような機体は登録することができません
昨年リニューアルされたDIPS 2.0で詳しいマニュアルも公開されているので、登録に必要なドローンの情報や、身分証明書などを準備の上手続きを進めていきましょう。
■DIPS 2.0はこちら:https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/portal/top/
なお、飛行申請や飛行計画の通報は従来通り無償で手続き可能ですが、この機体登録手続きについては有償となっているのでご注意ください。(手続き方法により登録料が異なります)
この登録が完了すると「登録記号」と呼ばれるものが発番されます。
登録情報を内蔵型のリモートIDと紐づけるか、外付け型のリモートIDに書き込みドローンに搭載するという流れになります。
リモートID搭載機種を買う
リモートIDには「内蔵型」と「外付け型」の2種類があるとご紹介しましたが、これからドローンを購入するという方には「内蔵型」をお勧めします。
すでにリモートIDが搭載されているドローンであれば機体登録料の支払いのみで済みますが、非搭載の場合は機体登録料+リモートID購入費用がかかってしまいます。
日本国内では非常に重要な飛行ルールであるため、製品情報にリモートID搭載の有無が書かれている場合がほとんどですが、購入前には必ず搭載の有無をご確認いただくことをお勧めします。
リモートID機器を後付けする
リモートIDを搭載していないドローンを購入した場合、もしくは保有しているドローンがリモートIDを搭載しておらず、事前登録期間を経過してしまった場合は、リモートIDを外付けすることで飛行ができるようになります。
【リモートIDを搭載する方法】でご紹介した通り、リモートID搭載の有無にかかわらず、まずはじめにDIPS 2.0で機体登録手続きを行います。
その後、別途購入したリモートIDへ登録した情報を書き込む手続きを行います。
リモートID搭載機種の一覧
国内外から様々なドローンが登場していますが、ここでは世界シェアNo.1のDJI製品をまとめてご紹介します。
これからドローンを購入したいと考えている方は、是非参考にしていただければ幸いです。
※2022年12月にメーカーから発表されている情報です
<コンシューマー向けドローン>
- DJI Mavic 3 Classic
- DJI Mavic 3シリーズ
- DJI Mini 3 Pro
- DJI Mini 3
- DJI Air 2S
- DJI Mavic Air 2
- DJI Mini 2
- DJI FPV
<業務利用向け産業用ドローン>
- DJI Mavic 3 Enterprise
- DJI Mavic 3 Thermal
- DJI Mavic 3 Multispectral
- DJI Matrice 30
- DJI Matrice 30T
- DJI Matrice 300 RTK
- AGRAS T30
- AGRAS T10
なお、これから発売されるドローンも当然対応していることが予想されますので、今後リモートID搭載ドローンはどんどん増えていくものと思われます。
しかし、根強い人気を誇ったMavic 2 Pro/Mavic 2 ZoomやPhantomシリーズは対応となっておらず、事前登録期間内に手続きを行っていない場合は、外付けリモートIDで対応することになってしまいました。
※リモートID制度がスタートする前に発売され、今回対象となったドローン(Mavic Air2やDJI FPVなど)は、ファームウェアのアップデートを行わないと対応することができないため、常に最新版へ更新しておくようにしましょう
アップデートが完了すると、アプリ画面上でリモートIDの書き込みができるようになります
リモートID機器について
では、外付けリモートIDを搭載しなければならない場合、どのように機器を取り付ければいいのかご紹介します。
ドローンはメーカーによってさまざまな形状をしているため、それぞれに合ったリモートを選択し、搭載する必要があります。
搭載位置
購入したリモートIDの仕様を確認し、適切な位置に取り付けを行います。
ドローンの飛行中は非常に強い風にさらされたり、機体の表面に負荷がかかったりする場面もありますので、指定されたサイズを確保できる安全な位置・プロペラやプロペラガードとの接触がないことをきちんと確認できる箇所に設置するようにしましょう。
搭載方法
こちらもリモートIDの種類によって異なりますので、使用前に説明書を確認して取付けを行ってください。
リモートID機器の落下やドローンの墜落を防ぐために、飛行前にも都度きちんと固定されているか確認を行うようにしましょう。
リモートID機器の選び方
リモートID機器も様々なメーカーから発売されています。価格やサイズ、取り付け方法が異なりますので、ご自身のドローンのサイズに合った機器を選定するようにしてください。
価格
およそ15,000~50,000円前後となっています。
ドローン保険を提供していることで有名な「エアロエントリー社」からも発売されており、20,000円前後とリーズナブルな価格設定なのでお勧めです。
■エアロエントリー社HP:https://aeroentry.co.jp/info/product/228/
サイズ
基本的にはコンシューマー向けドローンに取り付けられる程度のコンパクトサイズに設計されていますが、ミニドローンレベルの機体だと搭載できない場合もありますので、事前に機器の重量とサイズ(取付けにどの程度の幅が必要なのか等)をチェックしておくようにしましょう。
重さ
こちらもドローンの飛行性能に影響を及ぼさないレベルの超軽量設計となっていることがほとんどで、大体7~12g程度あることが多いようです。
(大型のものでは30gを超える機器もあります)
Youtubeやブログで各リモートIDのレビューを見ることもできるので、サイズ感や重量が気になる方は是非検索してみてください。
通信距離
これも各メーカーや機種によって様々ですが、先ほどご紹介したエアロエントリー社の機器は30分の急速充電で6時間以上稼働でき、300m以上の通信距離があるので、ほとんどの空撮においては問題ない仕様といえます。
さらに長い距離の通信が可能な機器や、稼働時間の長い製品もありますが、その分重量が増えてしまうケースが多いので、全体的なスペックを見て選ぶことをお勧めします。
まとめ
21世紀以降になって、突如として現れたドローン。用途は様々に拡がり可能性は無限です。
高価な精密機械でありながら、操作は至って簡単。
しかし、一つ間違えば悪魔の兵器にもなり得る危険もはらんでいます。
手にする人みんなが、しっかりとそのことを意識して、ルールを守り安全に気を配って利用する為に、リモートIDが必要なのです。
これからドローンを飛ばそうと思っている方も、すでにドローンを飛ばしている方も、常に最新の情報に注意しながらドローンを活用してきましょう。
ドローンレンタルのドロサツ‼では、空撮用や産業用ドローン、水中ドローンなど幅広い用途のドローンレンタルが可能です。
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監修者
森本 洸生(もりもと こうき)
株式会社 drone supply &control (ドローンエバンジェリスト)
<略歴>
中学生の時に国土交通省の全国包括申請許可取得し、鹿やイノシシによる農作物被害を守る害虫駆除のプロジェクトに参画するなど、若い世代のドローン第一人者。現在では様々なドローン事業に参画するなど多方面で活躍中。
<所有する資格>
- DJI CAMPスペシャリスト
- DJI CAMPインストラクター
- DJI CAMP ENTERPRISEインストラクター
- 無人航空従事者試験1級
- CRPI公認指導員
- 総飛行時間400時間以上