「精密農業」という言葉をご存じでしょうか?収穫量、品質の向上を目指しながら、肥料、薬剤、水、燃料等のコストも最小化する農業技術のことを指します。
農業におけるドローンの活用といえば農薬散布のイメージがありますが、環境情報を把握するフィールドセンサー、土壌センサー、生育状況等をデータ化することで、高度な農場管理が出来るようになります。
昨年の12月、DJIから新たに作物のモニタリング分析が可能なモデル「Mavic 3 Multispectral」が登場し、従来のP4 Multispectralの終了が決定しました。
新型ドローンと従来のモデルの異なる点や、精密農業に欠かせない機能をご紹介していきます。
これから農業に導入を検討している方には必見です。
データの見える化を実現する「マルチスペクトルカメラ」とは?
マルチスペクトルカメラでは、レンズで光の振動方向などの偏向情報を捉え、最先端の画像処理機能を備えたカメラで植物の生育観察、異物の検出などを行います。
生産と品質の効率を高める上で欠かせない、あらゆる分野で応用されているカメラです。
人間の目では見えない情報を可視できる
太陽光や照明の光が農作物に当たり返ってくる光の中には、人の目で見える可視光線だけでなく、紫外線や赤外線、遠赤外線など、人の目で見ることができない不可視光線があります。
マルチスペクトルカメラは不可視光線を捉えることができるため、農作物の生育状況を調べることが可能です。
定期的な撮影を行いデータ化することで、安定的に生育状況を把握できるようになります。
マルチスペクトルカメラが活用されている分野
マルチスペクトルカメラが活用されているのは農業分野にとどまりません。
例えば環境調査においては、森林や河川、海岸などの植物の生育や湿原の水質汚濁の状況調査に活用されています。定期的に調査することで病害虫対策が出来るようになります。
実際に愛知県で実施された事例で、マルチスペクトルカメラを搭載した無人航空機で広域を調査し、画像から算出された正規植物指数を用いることで、病木を早期発見することが出来ました。
有人による調査よりはるかに低コストであり、夜間動物調査も可能です。
また、ダムやトンネルなどの岩盤構造物の工事では、マルチスペクトルカメラを活用しすることで地質調査の詳細状況を把握し、施工前の調査制度をあげるとともに調査費の削減にも繋がっています。
「Mavic 3 Multispectral」の優れた携帯性と進化した飛行性能
Mavic 3 Multispectralは、RGBカメラとマルチスペクトルカメラの2種類を搭載し、作物の詳細をスキャンして生育状況を分析できます。
デジタル管理で高精度な作業を実現できることが大きな特徴のドローンですが、従来モデル「P4 Multispectral」からアップデートされたポイントを紹介していきます。
人気コンシューマーモデル「Mavic 3」に農業用カメラを搭載
Mavicシリーズ初の精密農業対応モデル「Mavic 3 Multispectral」のベースとなったのは、機体の性能や安全性、綺麗に撮れる映像を含めて、プロからの信頼度・満足度の高いDJIのフラッグシップモデルMavic 3です。
その性能を引き継ぎ、さらに業務用として進化した「Mavic 3 Multispectral」は、折り畳みが可能で携帯性に優れ、重量もP4 Multispectralが1487gだったのに対し、わずか951gと軽量です。
サイズも223×963×122,2mm(折り畳み時)、347,5×283×139.6mm(展開時)と、コンパクトで持ち運びやすい大きさです。
長時間飛行による作業効率化と安全性の確保
動作環境はー10℃~40℃で、一年を通して運用が可能です。
効率的な急速充電で、P4 Multispectralよりも長い43分の飛行が可能で、目安として、1回の飛行で最大200ヘクタールをカバーすることができます。
搭載している全方向障害物回避機能では、全方向の危険物を正確に検知し、回避することが出来ます。
地形フォロー航空測量は、山林や果樹園など起状のある地形で簡単に使うことができます。
質の高いデータを定期的に取得するための機能
ドローンの業務利用で避けなければならないのが、操縦者や撮影時間、天候などの影響によりばらつきがでることです。
正確な撮影データを取得することで、広大な土地を一度に分析でき、農業生産をよりスマートすることができます。
高精度な航空測量に対応した映像システム
Mavic 3 Multispectralは、cmレベルでの高精度測位を実現するRTKモジュールを搭載しています。
フライトコントローラー、カメラ、RTKモジュールをマイクロ秒単位で時刻同期を行うことで、カメラ露出の中心点を正確に取得し撮影します。
これにより、地上基準点(GCP)を使用しなくても、一度の飛行で200ヘクタール航空測量が可能なのです。
また4Gネットワークで撮影した映像を、リアルタイムでDJIスマート農業プラットホームにアップロードでき、作物の生育過程における欠株、雑草の発生などの異常状態をモニタリングし、作物の生育情報を共有できます。
DJI03映像伝送システムでは遠距離からの空撮測量が可能で、機体下のビジョンセンサーと合わせて傾斜の激しい場所でも高度を維持しながら速やかに作業ができます。
このモジュールを搭載し「どこからどこまで」と飛行することで、バッテリーの無駄な消費を抑えることができます。
太陽放射照度を捉える日照センサー
農作物のモニタリングでは、飛行時の気象条件を把握することがとても重要です。
晴れ、曇り、時間によってNDVIは大きく変化します。
※NDVIとは、植生の分布状況や活性度を示す指数で、植物による反射の特性を生かして、植生の状況を把握することを目的とした指数です
Mavic 3 Multispectralに内臓されている日照センサーが太陽放射照度を捉え、画像ファイルにその情報を記録するため、2D再構築中に画像データの光量を補正することができます。
この日照センサーにより正確なNDVIデータが得られ、取得したデータの精度や一貫性を高く保つことができます。
まとめ
従来のP4 Multispectralよりコンパクトで軽量、高度な機能を備えた「Mavic 3 Multispectral」はいかかでしたでしょうか。
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監修者
森本 洸生(もりもと こうき)
株式会社 drone supply &control (ドローンエバンジェリスト)
<略歴>
中学生の時に国土交通省の全国包括申請許可取得し、鹿やイノシシによる農作物被害を守る害虫駆除のプロジェクトに参画するなど、若い世代のドローン第一人者。現在では様々なドローン事業に参画するなど多方面で活躍中。
<所有する資格>
- DJI CAMPスペシャリスト
- DJI CAMPインストラクター
- DJI CAMP ENTERPRISEインストラクター
- 無人航空従事者試験1級
- CRPI公認指導員
- 総飛行時間400時間以上