2020年7月、全国のインフラ点検に関する規制改革実施計画が内閣府から発表されました。橋梁点検においても、ドローンを利用したメンテナンス環境がいよいよ本格的に整えられようとしています。ドローンで行う橋梁点検には、一体どのようなメリットがあるのでしょうか。ポイントごとの注意点とともに説明します。
近年、橋梁点検におけるドローンの活躍がますます期待されています。橋梁点検にドローンを導入するメリットとは何でしょうか。
この記事では、ドローンを使用した橋梁点検のメリットや注意点を解説します。
なお、本記事の情報は2021年10月時点の情報になります。最新の情報は各公式サイトをご確認ください。
ドローンで橋梁点検を行う5つのメリット
全国のインフラを維持管理するために、ドローンによる点検は徐々に浸透してきており、ドローンの機能は日に日に進化してきています。
ここでは、ドローンで橋梁点検を行うメリットを説明します。
1.作業人員の削減ができる
ドローンを橋梁点検に導入すると、作業人員を削減できます。
橋梁点検の状況や環境によって、ドローンを操縦するパイロットがいるだけで最低限の点検が可能です。
橋梁点検に使用されるドローンは、撮影する映像を自動分析する機能を搭載しているため、簡易な点検など場合によっては、ドローンのパイロットに専門知識を要求することなく行える可能性があります。
もちろん、ドローンの映像は遠隔からモニター確認できるので、複数の目による監視にも対応します。
従来の橋梁点検では、広大な面積を点検・診断する作業人員のほか、吊り足場の設置や橋梁点検車に関わる人員など多くの作業人員を必要としました。
ドローンを利用することで、それらを使わずに橋梁点検が可能となり、作業人員の削減に貢献できます。
2.安全に橋梁点検ができる
ドローンを利用した橋梁点検は、作業員のリスクを回避し、安全に橋梁点検が行えます。
橋の上や地上でのドローン操縦と画面の確認で、橋梁点検が可能なのです。
橋梁点検車や高所作業車での点検が難しい場所へも、ドローンが作業員の代わりに写真や映像の撮影を通して点検を実施してくれます。
ドローンを橋梁点検に活用することで、吊り足場の設置やロープアクセスによる落下の危険が避けられ、作業に携わる人々の安全が確保できます。
また、橋梁点検に使われるドローンは自動操縦が可能な機種も多いため、操縦ミスによる危険が少ないことが特徴です。
3.交通規制による渋滞を緩和できる
橋梁点検にドローンを利用することで、道路の渋滞を緩和することが可能です。 橋梁点検には、橋梁点検車を使用して橋の裏側に作業員を運んだり、移動式足場の設置をしたりするための特殊車両を含めた多くの車が集まります。
橋梁点検車が現場に配置されると、道路の片側車線の通行規制が必須となり、車の通行量が多い少ないにかかわらず渋滞を起こす可能性が高くなります。
ドローンを利用して橋梁点検を行うと、最低限の点検作業ならばドローンのパイロットのみで可能です。
補助者を含めても、交通規制の必要がなく渋滞は緩和されます。
4.点検時間とコストの削減ができる
ドローンを使用した橋梁点検は、点検時間とコストの削減が実証されています。
国土交通省が発表した「新技術ドローンによる橋梁点検の実施について」では、 次のような実証結果がでています。[注1]
1.橋梁定期点検要領に基づいた1,000㎡範囲の橋梁点検の場合、橋梁点検車を利用して夜間2日かかっていたところ、ドローンによる橋梁点検の実施では、ドローンの準備と後片付けを含めても、昼間1日で作業が終了しています。
2.道路橋定期点検要領に基づいた1,000㎡範囲の橋梁点検の場合、橋梁点検車で5 径間を2日で行っていたところ、ドローンでは半日程度の作業です。
コストの面でも、橋梁点検車の配備や交通規制に関わるコストが大幅に削減されています。
内業に関する作業は代わりませんが、トータルで検証すると1においては80万円以上かかっていた費用がドローンの導入で70万円ほどに削減されています。
2では、60万円以上が半分ほどの30万円弱に減りました。
このようにドローンで橋梁点検を行うことで、点検にかかる時間が少なくなります。
また交通規制の必要がなくなり、人件費や機械経費などトータルで費用の削減が可能です。
[注1]国土交通省|新技術ドローンによる橋梁点検の実践について https://www.kkr.mlit.go.jp/plan/happyou/thesises/2021/pdf04/ino1-0 5.pdf
5.ドローンならではの高精細な点検ができる
ドローンに搭載されているカメラは高性能なので、橋梁点検では高精細な能力を発揮した点検が見込まれます。
光学ズームが行えたり、橋梁に接近して撮影できたり、多様な機能で高度な橋梁点検を可能にします。
カメラの機能は画素数が多いだけでなく、赤外線カメラ付きであれば、熱画像の撮影も行えるのです。
赤外線により橋梁の温度を可視化することで、目に見えない異常を検知できま す。
打音や触診など人力に頼っていた点検も、ドローンで担えることが鳥取県江島大橋プロジェクト実証試験報告書で確認されています。[注2]
鳥取県江島大橋プロジェクトで使用された打音機能付きドローンは、有線式のマルチコプター上部に4つの車輪と打音点検機構が搭載されたものです。床版に車輪を押し当てながら打音点検を行いました。
ドローンを使用することで、橋梁のひび割れや浮きの点検にも対応ができ、点検精度においても進化を続けています。
[注2]鳥取県建設技術センター|江島大橋プロジェクト実証試験報告書
ドローンで橋梁点検を行う際の3つの注意点
ドローンで橋梁点検を行うメリットは無限大に広がる可能性が見込まれます。しかし、注意すべき点も存在します。ここでは、ドローンを使用した橋梁点検の際に気をつけたい注意点を3つ紹介します。
1.画像データの処理に時間がかかる
ドローンで橋梁点検を行うと、撮影データや損傷場所の解析工数が膨大な数に及ぶことが問題です。
撮影された画像から損傷個所を自動で検出する技術は、一部実用化されているものもありますが、開発が進められている状況です。
国土交通省が募集した民間企業によるアイデアには、橋梁写真と橋梁の情報の入力で、AIが劣化に関する自動診断や調書を自動で作成するという実証が挙げられています。
高い診断精度を持ち判断結果のバラつきや見落としを防止し、多大な時間を費やすデータ処理作業の効率化が期待されているのです。
2.飛行禁止区域やルールに注意する
橋梁点検でドローンを活用する際は、ドローンの飛行禁止区域や航空法のルールに注意しなければなりません。
原則として、空港周辺の空域や地上150m以上の上空ではドローンの飛行は禁じられています。
いずれも航空機の安全を守るために法律が定められています。
国土地理院が出す人口集中区域(DID地区)においても、ドローンの飛行は禁止されています。空港周辺、地上150m以上、人口集中区域でドローンを飛ばす場合は、国土交通省の許可が必要です。
インフラメンテナンスにおけるドローン利活用に向けた環境整備は、今後さらに広がる可能性があり、許可・承認対象の見直しを含め、国土交通省による手続きの簡素化を計る見通しです。
3.天候に注意する
精密機械を積んだドローンは、基本的に雨天や暴風などの悪天候時の飛行に気を配らなければなりません。
防水機能付きのドローンでも、強風時の飛行は墜落の危険性があります。
国土交通省が発行する無人航空機飛行マニュアルでは、5m/s以上の状況下での飛行は奨励していません。[注3]
現在では、悪天候に強いドローンの開発がされつつありますが、天候には注意しましょう。
ドローンで安心・安全でコスト削減に向けた橋梁点検を
ドローンはさまざまな現場で活躍が期待されています。橋梁点検においても、今後積極的にドローンの導入が進んでいくでしょう。ドローンを使用することで、安心・安全に橋梁点検を行うことができ、コストの削減にもつながります。
将来的には、定期点検前のスクリーニングへの活用など、活躍の場がさらに広がっていくことが予想されます。
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監修者
森本 洸生(もりもと こうき)
株式会社 drone supply &control (ドローンエバンジェリスト)
<略歴>
中学生の時に国土交通省の全国包括申請許可取得し、鹿やイノシシによる農作物被害を守る害虫駆除のプロジェクトに参画するなど、若い世代のドローン第一人者。現在では様々なドローン事業に参画するなど多方面で活躍中。
<所有する資格>
- DJI CAMPスペシャリスト
- DJI CAMPインストラクター
- DJI CAMP ENTERPRISEインストラクター
- 無人航空従事者試験1級
- CRPI公認指導員
- 総飛行時間400時間以上