令和6年、笑顔で迎えたお正月の1月1日午後4時10分に、石川県の能登半島で最大震度7の巨大地震が発生しました。
震源が浅かった為に非常に大きな揺れとなり、日本海沿岸の広範囲に津波が発生、輪島市を中心に建物倒壊、土砂災害、火災、道路寸断など大きな被害が発生しました。
この災害は、迅速な被害状況の把握と支援活動を必要とし、ドローン技術の積極的な利用につながりました。
今回、その被災地支援において利用されたドローンの成果を事例と共に紹介いたします。
災害時にドローンを活用
災害時のドローン利用は、被災地においてさまざまな役割を果たします。
例えば救助活動や被害状況の把握、物資輸送などが主な役割と思われますが、災害時のドローン利用の概要についてみてみましょう。
被災地の把握状況
ドローンは空中から高度な映像や写真を撮影できるため、被災状況をリアルタイムで把握することができます。
建物の倒壊や道路の寸断などの被害状況と素早く把握し、適切な救助活動や復旧作業を行うための情報を収集できます。
救助活動の支援
高所や悪路など、陸路から到達が困難な場所にもアクセスしやすく、救助活動においては生存者の捜索や救助に活用できます。
ドローンに搭載した赤外線カメラは見えない情報を可視化するので、建物の倒壊個所や生存者の位置を特定することができます。
通信インフラの支援
災害発生時に通信インフラが使用不可能になることがあります。
そんな時にドローンを使用して一時的な通信中継基地を設置することが可能です。
これにより、救助活動や被災者の安否確認など、コミュニケーションをスムーズに行うことができます。
被災地の地形・地盤調査
空中から地形や地盤を観察することで、土砂崩れや河川氾濫の危険個所を特定すし、避難勧告の発令や避難経路の確保に役立ちます。
物資の配送
ドローンを使って食料や衣料品などの物資を被災地に素早く届けることができます。
救援物資輸送の時間を短縮できれば、被災者の生活支援に役立ちます。
具体的な事例と成果
この度の能登半島地震では、ドローン業界団体である一般社団法人UAS産業振興協議会(JUIDA)の指揮の元、株式会社エアロネクスト、株式会社ACSL、株式会社NEXT DELIVERY、ブルーイノベーション株式会社、株式会社Liberaware(リベラウェア)などが初期災害時支援活動を実施しました。
これは石川県の防衛・警備を担当する陸上自衛隊第10師団との連携作業で行われました。
ドローンポートを利用した土砂ダムの定期監視等、これまで、災害時を想定した実証実験や訓練は国内各所で行われてはいたものの、実際の災害現場におけるドローンの支援活動は前例がわずかであった為、この度の活動で改めてドローンの有用性が示されました。
主な事例
ここで、能登半島地震における、実際にドローンを活用した事例をご紹介します。
事例1:人の立ち入りが難しい倒壊した家屋において、所有者の許可のもと、ドローンを飛行させて損壊状況を撮影、その映像を罹災証明の発行に活用しています。
事例2:商業施設では、余震による二次災被害を防ぐために、設備調査を行いました。
ドローンで取得したデータを解析して現状どのような状況なのかを可視化させ、復旧計画に役立てています。
事例3:石川県輪島市の孤立した地域に対して、ドローンによる薬の配送を行いました。
約10分で3kmほど離れたし場所にある避難所まで配送が完了したとのことです。
事例4:石川県輪島市にある一部のエリアにおいて、ソフトバンクが空中にドローンをホバリングさせ、通信エリアを提供しました。
これらの活動は、ドローンが災害時に迅速な情報収集を行い、被災者の支援と復旧作業に貢献することを実証しました。
特に陸路での配送が難しい場所への医薬品の配送は、ドローンならではの利点を生かした事例として高く評価されています。
ドローン活用の課題
災害時のドローン利用には、さまざまな課題が存在します。
法整備はもちろん、飛行時間の延長や荷物搭載能力の向上についても、一刻も早い技術的な改善が望まれます。
飛行禁止空域
ドローンの小型化・軽量化が進み活用の場が広がっている一方、空の安全を守るため、航空法で飛行ルールが定められています。
能登半島地震では、能登半島上空を緊急用務空域に指定、有人ヘリコプターによる捜索や救助活動の妨げにならないよう、ドローンの飛行を原則禁止にしました。
その後、1月6日には一部地域で下限高度が地上から30mに変更になり、特例を申請して飛行できることになりました。
災害時のドローン利用を促進する為にも、例外措置に対する迅速な決断が重要ですね。
まとめ
能登半島地震でのドローン利用は、災害対策に置いてその有効性を示す貴重な事例となりました。
今回の成果や見えた課題をもとに、引き続き技術的課題の克服、法規制の適切な調整などを通じて、関係各省庁との連携を密にし、より安全で効果的な災害対策が実現されることを期待いたします。