新しい技術の導入は、常に世の中に革新をもたらします。
AIやXRなど、ここ数年で色々な最新技術が社会に浸透し始めていますが、ドローンも例外ではなく、毎年さまざまな分野に活用できる新機種が国内外から発表されており、取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。
世界シェアNo.1を誇るDJIが提供する「Zenmuseシリーズ」は、高性能な可視光カメラや赤外線カメラ、ズームカメラ、レーザー計測器などを搭載しており、今や産業分野でドローンを活用する際には欠かせない機材となりつつあります。
昨年は待望の測量用最新カメラ「Zenmuse L2」が発表され、大きな話題となりました。
先進的な技術を搭載して空からデータを収集し、高精度な測量やマッピングを実現したことで、通常業務のみならず災害発生時などにも積極的に活用されていくことが予想されます。
現時点で初代Zenmuse L1の販売・生産は終了とアナウンスされていますが、どのような点がアップデートされたのか、特徴や機能に焦点を当ててZenmuse L2 をご紹介していきます。
DJI Zenmuse L2基本仕様比較
まずは、Zenmuse L1とL2のスペック・基本仕様の比較から見ていきましょう。
■DJI Zenmuse L1
- サイズ :152×110×169mm
- 重量 :930±10g
- 消費電力 :30w(標準) 60w(最大)
- 点群率 :シングルリターン 最大240,000/秒・マルチリターン 最大480,000/秒
- シズテム精度:水平 10cm@50m・垂直 5cm@50m
- ISO :動画 100-3200(Auto)100-6400(Manual)・静止画 100-3200(Auto)100-12800(Manual)
■DJI Zenmuse L2
- サイズ :155×128×176mm
- 重量 :950±5g
- 消費電力 :28w(標準) 58w(最大)
- 点群率 :シングルリターン 最大240,000/秒・マルチリターン 最大1,200,000/秒
- システム精度:水平 5cm@150m・垂直 4cm@150m
- ISO :動画 100-6400・静止画 100-6400
Zenmuse L1は3リターンでしたが、Zenmuse L2では5リターンとなりました。
これまでの3リターンでは届かなかった部分のデータも取得できるようになったため、より精密にデータを計測できるようになったと言えます。
ビーム発散角を比較すると、Zemuse L2はL1の4分の1程度までサイズダウンし透過率が向上したため、こちらもデータ精度の向上に大きく関係しています。
また、DJI Matrice 300 RTKとZenmuse L1を起動させた際、ウォームアップのために一定時間放置しなければいけませんでしたが、Zenmuse L2ではこのデメリットも改善されており、タイムロスなく業務を遂行できるようになりました。
(Matrice 300 RTKとZenmuse L2を接続する場合、送信機のみDJI RC Plusへ変更する必要があるのでご注意ください)
写真測量としても使用できる可視光カメラの性能
測量用のカメラを選ぶ際、写真測量向けのZenmuse P1と、レーザー測量向けのZenmuse L2で迷われた方も多いのではないでしょうか。
1台あたり100~200万円もするカメラですから、気軽に両方買うというわけにもいかず、使っている人たちの口コミがある程度把握できてから・・・と購入を見送っている方もいらっしゃるかと思います。
Zenmuse L2の特徴を簡単にご紹介しましたが、可視光カメラの性能についてもご紹介させていただきます。
Zenmuse P1には劣りますが、Zenmuse L2は写真測量向けドローンMavic 3 Enterpriseと同等の可視光カメラが搭載されています。
シャッター間隔は最大0.7s、L1よりも高速連写が可能となり、飛行速度を上げて効果的にデータを取得できるようになりました。
高度なLiDARシステムを搭載したL2は進化したRGBカメラを搭載したことで、レーザー測量の精度をより向上させるだけでなく、用途も広がりました。
これまで以上に使い勝手がよくなり、さらに価格はL1よりも少しばかり抑えられています。
新しくなったMatrice 350 RTKとともに、是非お試しいただきたい最新機器です。
レーザー測距機能とデータ品質
対象物までの距離を測定する機能に関しては、Zenmuse L1、L2 に大きな違いは見受けられないという声もありますが、実際はどうでしょうか。
L1はリアルタイムでトゥルーカラー点群モデルを生成し、1度の飛行で約2㎢の点群データを取得できます。
一方、Matriceを起動させてすぐに飛行できるL2では、一度の飛行で約2.5㎢のデータを取得することが可能で、地形データと先述の通りRGBデータの両方をスムーズに取得することができるようになりました。
個人的には「ウォームアップの待ち時間がない」「5リターンかつビーム発散角がサイズダウンした」という点だけでも、これから導入するのであればZenmuse L2一択と考えています。
(Zenmuse L1は現在市場に出回っている在庫がなくなり次第終息予定です)
両カメラともに従来の地上測量と比べ、作業時間の大幅な短縮を実現し、広範囲の測量を高い精度で行えるという点、また人力では難しい危険なところでも迅速に測量業務を追行できる等、大変メリットの多い手法と言えるでしょう。
データ処理速度
データ処理(プロセッシング)とは、得られた情報(データ)をもとに、計算を施したり加工して役立つ形に整えることを指します。
膨大なデータを扱う際に、せっかくの各データがそのままの状態では、活用もできません。特定の条件で分類したりしないと意味不明なデータの羅列状態が続くだけですよね。
しかし、その作業にはたいていの場合、品質だけでなく速度も要求されます。
L1、L2とも、作動中に点群モデルのプレビュー、再生、処理を行うことができますが、L2は検知範囲が広がり点群情報を早く取得することが可能、さらに高精度でスキャンができるようになりました。
Zemuse L1を使用している際、コントローラー(業務用スマート送信機)が処理能力を超えてフリーズしてしまうというトラブルもチラホラ耳にしましたが、L2はDJI RC Plusのみ対応ということで、「データ処理速度」にもしっかり焦点を当てたアップデートであることが分かります。
DJI Zenmuse L2の適用分野とは
どれだけ機器の性能が優れていても、その使用目的がピッタリはまっていなければ当然ながら真価が発揮されません。
ドローン測量
ZenmuseL1、L2はともに航空測量用として開発されたカメラです。
複雑な形状の建造物を含む測量や、木が生い茂っている箇所など地表が見えにくい場所においては、L2の方が圧倒的な精度を誇ります。
L1、L2で取得した点群データをもとに、綿密な自動飛行ルートを作成することも可能で、活用方法は測量だけにとどまりません。
災害発生地のマッピング
2024年元日に発生した震災においても、測量用ドローンが数多く導入されています。
人が立ち入れないエリアのデータ取得も容易なため、緊急時のマッピング作業はドローンが非常に有効な手段となります。
建設業界への適応力
地形・物体の大きさや形状、方位を測量し取得されたデータは、地図や建物の設計、道路や線路の設計にも利用されます。航空写真によって定期的に進捗管理を行うことで、作業もスムーズに進みます。
昨今の建設業界では、深刻な人手不足、大幅な予算超過が問題となっています。
ドローンを積極的に活用していくことで、労働時間の短縮や工数の削減、危険作業の回避を実現することができます。
まとめ
安価なレーザー測量カメラとして話題になったZenmuse L1ですが、今回登場したZenmuse L2は操作性に優れ、これまで以上に高精度な測量・マッピングが可能になりました。
購入前にまずはレンタルして試してみたい、極力コストを抑えて必要な時だけ無駄なく使いたいという方は、是非お気軽にご相談ください。
導入前のレクチャーや、セットアップサポートも実施しています。
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