現代においてDJIは世界をリードするドローンメーカーで、その高性能な機体はさまざまな分野から注目を集めています。
特に商業現場においては、作業効率と業務遂行における安全性の向上に大きく貢献しています。
ドローンを活用することで、従来の手法では膨大な時間を費やしていたモニタリングや、取得が難しかった視点からのデータ収集などが可能になり、一連の作業コストも大幅に減少しています。
本コラムでは、DJIの機体がどのように、建築、農業、物流、警備などの分野で貢献しているのかについてご紹介していきます。
建築と土木でのDJIドローン
インフラなど、私たちの生活と密接に関わっている建築と土木の分野においては、技術者の高齢化や人手不足が大きな課題になっています。
若い人を中心に労働者の減少が深刻化している一方、企業が担保すべき安全対策へのハードルは年々厳しくなっています。
こうした現場では、ドローンや自動制御装置を導入することで、現場の負担が確実に軽減されます。
作業効率が改善されるので現場の労働環境も良くなり、これまでになかった新しい働き方が実現することで人材確保がしやすくなるという期待もあります。
活躍するDJI の「RTK」
「RTK」とはハイクオリティな測位技術で〝Real-Time Kinematics〟(リアルタイム・キネマティック)のことをいいます。
人工衛星のGNSSを国内にある複数の基地局を使って受診し、誤差の少ないXYZ座標を検出することができます。
DJIの産業機には、建築現場や土木プロジェクトにおいて、正確な地形測量を行うために設計されたRTKモジュールを搭載したモデルが数多く存在します。
DJI Matrice 350 RTK
ドローンでは通常スマートフォンと同じGPSを使用していますが、高精度な自己位置測位が可能なGNSSと併用することで、センチメートル単位の位置情報の精度が実現しました。
これによって3Dマッピングや進捗状況が、簡単かつ正確につかめます。
それにプラスして機体の制御を正確に行えるようになるため、点検対象物との距離を保ったまま地上から業務を行うことができ、現場の作業員の方々を危険にさらすことなく、点検やデータの収集が行えます。
例えば、現場の状況の変化が激しくても、ドローンで頻繁にデータを収集し進捗状況を把握することで、適切な資材調達や人員配置が可能です。
前方・後方・上方・下方・側方の6方向に障害物検知機能を搭載し、ドローン自体の安全面もしっかりと設計されています。
農業分野でのイノベーション
農業においては、ドローンの導入が画期的なイノベーションをもたらしています。
従来の農業に比べて、ドローン技術を導入したスマート農業では、生産性の向上や効率化、コストの削減、人手不足の解消に役立っています。
具体的にどのような技術・機能を搭載しているのか簡単にご紹介します。
農薬散布用ドローン DJI Agras
「DJI Agras」シリーズは、農薬散布用に設計されたドローンです。
従来のモデルに比べ、正確な飛行計画と農薬散布が可能になりました。
複数のノズルと高精度フローメーターで、均等に正確に農薬散布を行うことができるようになり、農薬の量の無駄を省けます。
過剰散布から作物を保護出来るだけでなく環境保護にも一役買えます。
広大な農地の散布は、口では言い表せないほどの大変な作業です。
人力での作業に比べたら圧倒的に時間と人手がかからず、年々深刻さを増す人手不足、後継者不足の問題解決に大きく貢献できます。
物流分野での革新
物流分野は、言うまでもなく現代社会に欠かせない要素です。
コロナ禍で外出が制限された中、インターネットショッピングが一気に普及し、宅配サービスも急速に増加しました。
様々なニーズに応えるため、企業はますます迅速な物流体系の構築を求められ、その一環として、ドローン後術の活用が新しい可能性として注目されています。
DJI FC30の挑戦
2023年8月、DJIは、素晴らしい新型物流ドローンを世におくりだしました。
「DJI FLY CART 30(略称FC30)」は、最大30kgの積載に対応しており、物流ドローンとして重要な飛行距離においても、16kmというスペックを誇っています。
さらに季節ごとの寒暖差が激しい日本においても申し分ない-20℃~45℃という温度差に耐えられる環境動作に加え、最大飛行高度はなんと6,000メートルとなっています。(基本的な運用上、ここまで高度を上げる必要はないと思いますが)
このドローンは自然環境に対して耐久性と柔軟性を兼ね備えており、過酷な環境下での物資輸送に最適です。
積載モードは、カーゴボックスと空クレーンの二つがあり、柔軟に切り替えて様々な輸送シナリオに対応出来ます。
法律面での課題は多いものの、陸路では時間がかかる山岳地帯や急を要する災害時の物資輸送など、多くの場面で活躍が期待されます。
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警備と監視におけるDJIの役割
日本国内では様々な場所に監視カメラが設置され、人々の安全を見守っています。
しかし、警備や監視には未だ多くの労働力が必要なのが現状です。
DJIのドローン技術を活用すれば、空中から広範囲をパトロールすることが可能です。
また、建物内では一般的に警備員が巡回しますが、ドローンを活用すれば人件費の削減になるだけでなく、危険な犯罪・トラブルに巻き込まれるリスクを回避できます。
現在では遠隔操作技術も発展しており、現地に赴かずにセキュリティ対策を行うことも可能になってきています。
監視任務にDJI Mavic3 Enterprise
DJI Mavic3 Enterpriseシリーズは、Mavic 3E、Mavic 3Tの2種類があり、空撮用ドローンDJI Mavic 3をベースにしたコンパクトな産業用ドローンです。
これまでの産業用ドローンと比べ、小型で折り畳み式となっており携帯性に優れています。
最大飛行時間は45分、もちろん全方向障害物検知機能で安全に飛行できます。
中でもDJI Mavic 3T(Thermal-サーマル)は、点検分野だけでなく、警備や監視にも適したドローンであるといえるでしょう。
搭載されたカメラは広角レンズで、静止有効画素数2,000万画素数と非常に高性能です。
見えない情報を可視化できる赤外線カメラを搭載し、2画面連動で2つの映像を並べて簡単に比較することができます。
遠くまで確認できる56倍ズームカメラと合わせれば、災害時の救助活動にも大いに役立ちます。
ドローンを活用することで、広範囲の監視と迅速な対応を可能にします。
ドローンの限界とDJIの取り組み
オールインワン型空撮ツール「DJI Mini 4 Pro」や、より高精度・効率的で信頼性の高い3Dデータの取得が可能な「DJI Zenmuse L2」、1インチCOMSセンサー搭載のポケットジンバルカメラ「Osmo Pocket 3」と、次々に新しいツールを発表し続けているDJI。
素晴らしい性能のドローンがリリースされた後でも、ユーザーはまだまだ期待してしまいますよね。
2023年7月、民生用ドローンと航空技術で世界をリードするDJIは、2017年に統計を開始して以来、世界中で1,000人以上の人々をドローンが危険から救ったと発表しています。
ですが、ドローンを活用するにあたり、日本においては飛行許可や申請、諸々の法規制があり、誰でもどこですぐに飛ばせるという環境ではありません。
もちろん、これらは安全にドローンを活用するために必要不可欠なものであり、何度も検証や実証実験を繰り返した結果、社会実装を進めるために少しずつ柔軟なルールに変わりつつあります。(レベル4飛行の実現、国家資格制度、機体認証制度の導入など)
飛行時間の延長、飛行範囲の拡大等の開発、自律飛行技術の発展、法規制への対応、ユーザーのプライバシー保護の注力等々、クリアすべき諸々細かい問題はこれからも続いていきますが、現行のルールの中でいかにドローンの利点を最大限引き出せるかが、我々の課題だと感じています。