DJIの産業用ドローンMatriceシリーズの価格と性能まとめ

ドローン世界シェアNo.1のDJIでは、一般向け空撮用ドローンの他、ありとあらゆる業務に活用できる数多くの産業用ドローンも販売しています。
 
しかし、「なんとなく産業用ドローンに興味があるな~」と思って調べたことのある方はご存じだと思いますが、普通のドローンに比べると、産業用ドローンの情報というのは非常に少ないのです。
 
機体毎の違いも専門用語が多すぎて素人にはあまりピンとこず、何より販売価格がネット上で公表されていなくて分からないというのが驚きでした。(※2020年4月現在、一部産業機に限り参考価格が公表されています)
 
もちろん販売している業者に問い合わせをすれば価格を教えてもらえると思いますが(じゃなきゃ買えない)、なんとなく知りたいな~という気持ちで”購入問合せフォーム”へ進むのは勇気がいるのではないでしょうか。
 
そんな方の為に、ざっくりとしたMatrice 200 V2シリーズの費用感、どこで買えるの?各機体の違いは何?搭載できるカメラは?どんな業務に使えるの?という疑問にお答えしていきたいと思います!
 
 
 
 

1.Matrice 200 V2シリーズはネットで気軽に買えない?

 
「価格が分からないって、そんな馬鹿な話ある?」と思う方もいるかもしれませんが、DJIは、原則ネット上で産業機の販売価格を公表していません。(Phantom 4 RTKやMavic 2 Enterpriseも)
 
DJI公式サイトの詳細ページでは、「DJIの正規代理店からご注文いただけます」とフォームへ誘導されます。つまり、価格を知りたければ必ず問い合わせをするしかないのです。
 
 
 

1-1.DJI正規代理店ってどこ?

 
気になる正規代理店ですが、この情報はDJI公式サイトで公開されています。
 
“弊社の認定ストア、正規販売代理店及び特約販売店以外で製品を購入された場合、保証期間内の故障でも無料保証の対象外となることがありますのでご注意ください。” という注意書きから、買うならここでね!という公式からのメッセージが伺えますね。
 
 
これらの正規販売代理店では、販売価格は公表していないものの、どのような機材がセットになっているのか、それぞれの特徴や使い方等が解説されているケースもあるので、予備知識ゼロの方はDJI公式サイトよりもこちらの方が理解しやすいと思います。(よくある質問なども載ってます)
 

1-2.購入までの流れ

 
例えばDJIオンラインストアで販売されているドローンは、その場で注文+支払いをすればすぐに届きますが、産業機が手元に届くまでにはもう少し時間がかかります。「〇月のこの業務で使いたい」等すでに計画がある場合は、早めに見積り依頼と納期の確認が必要です。
 

①販売店に問い合わせる(見積りを依頼する)

 
王道のMatriceにしても、どのような業務に活用していくかによって、必要となる機材が変わってきます。何もわからないままとりあえず問合せをするというよりは、ざっくりと機材に目星をつけておいた方が後々スムーズです。
 

②見積り・納期を確認する

 
ネットでサクッと購入できるドローンとは異なり、産業機はメーカー取り寄せとなるケースも少なくありません。特に人気のある機種・発売されたばかりの機種は数週間~数か月待ちになることもあるため、価格だけでなく納期もしっかりと確認しておくことをおすすめします。
 

③購入申し込み(支払い)

 
金額と納期に問題がなければ、申込みに進みます。
 

④納品

 
ここでやっと機材ゲットです。
 
 

2.販売価格を予想してみる

 
ネット上で正確な販売価格を知ることはできませんが、一部機種で公開されている参考価格や、すでに購入した方のレビューを元に、それぞれの価格帯を予想してみました。
 
 
それぞれの機種では200,000円前後の開きがありそうです。それにしても、とりあえず真ん中の210にしておこう!なんて決め方はできない価格ですね。(Phantom何台買えるんだろう・・・)
 
ただ、公開されているのがアフターサービスやオプション機材とのセットだったりするので、本体だけであればもう少し安く手に入るような気がします。
 
 
 

3.それぞれの性能の違い 

次に、各機体のスペックを比較していきます。
これらの3機種は、それぞれの用途に合わせた性能を兼ね備えています。
 
Matrice 200 V2  Matrice 210 V2 Matrice 210 RTK V2
サイズ 883×886×398 mm 883×886×398 mm 883×886×398 mm
重量 約4.69 kg 約4.8 kg 約 4.91 kg
最大離陸重量 6.14 kg 6.14 kg 6.14 kg
最大ペイロード 1.45 kg 1.34 kg 1.23 kg
ホバリング精度 (GPSあり、Pモード) 垂直方向:±0.5mまたは±0.1 m(下方ビジョンシステム有効時) 水平方向:±1.5mまたは±0.3m(下方ビジョンシステム有効時) 垂直方向:±0.5mまたは0.1m(下方ビジョンシステム有効時) 水平方向:±1.5mまたは±0.3m(下方ビジョンシステム有効時) 垂直方向:±0.5mまたは0.1m(下方ビジョンシステム有効時) 水平方向:±1.5mまたは±0.3m(下方ビジョンシステム有効時)
ホバリング精度 (D-RTK、M210 RTK V2) ​- ​- 垂直方向:±0.1 m、水平方向:±0.1 m
最大角速度 ピッチ: 300°/s、ヨー: 120°/s ピッチ: 300°/s、ヨー: 120°/s ピッチ: 300°/s、ヨー: 120°/s
対応ジンバル構成 シングル下方ジンバル シングル下方ジンバル、デュアル下方ジンバル、シングル上方ジンバル シングル下方ジンバル、デュアル下方ジンバル、シングル上方ジンバル
対応 DJI ジンバル Zenmuse X4S/X5S/X7/XT/XT2/Z30 Zenmuse X4S/X5S/X7/XT/XT2/Z30 Zenmuse X4S/X5S/X7/XT/XT2/Z30
保護等級 IP43 IP43 IP43
​GNSS GPS+GLONASS GPS+GLONASS GPS+GLONASS+BeiDou+Galileo
 
まず、大きな違いとして搭載できるジンバルカメラの数が挙げられます。 Matrice 200 V2は下方に1台のみ搭載できますが、210 V2/210 RTK V2は下方に2台、上方に1台の最大3台搭載することができます。
 
調査・点検範囲がそこまで広くなく、単純な構造である場合は200 V2でも問題ありませんが、さまざまなカメラを用途に合わせて使用したい・複数のカメラで同時に撮影を行いたい場合は、210 V2/210 RTK V2の使用が適しています。
 
また、210 RTK V2のみ高性能RTKモジュールを内蔵しているため、より精度の高い位置情報データを取得することが可能です。
 
 

4.具体的な活用シーンは?

 
それでは、各機体の性能を生かせる活用シーンの一部をご紹介していきます。
 
 

4-1.外壁調査

 
安定した飛行が可能なため、常に一定の距離を保ったまま広範囲を調査する業務との相性は抜群です。ズームカメラを搭載することで、複雑な構造の建造物に対しても離れた場所から安全に撮影ができます。
 
調査対象が決まっていて、複数のカメラでの同時撮影を必要としない業務であれば、Matrice 200 V2でも問題なく活用できます。
 
 
 

4-2.太陽パネルの点検

 
機体の下方に取り付けた2台のカメラで同時撮影が可能なMatrice 210 V2なら、
  1. 1.ズームカメラで破損状況の確認
  2. 2.赤外線カメラで電気系統の異常確認
といった調査が可能になります。パネル一枚一枚を歩いて確認していた従来の調査方法に比べ、作業時間の大幅な削減に繋がります。
 
 
 

4-3.敷地測量

 
唯一RTKモジュールが搭載されたMatrice 210 RTK V2では、数㎝レベルの極めて精度の高い測量が可能です。空から広範囲の測量が可能になるため、人の立ち入りが難しい地形であってもすぐに撮影が開始できます。測量向けの専用ソフトウェアを使用することで、地図の製作も簡単に行えます。
 
 
 

5.Matriceシリーズが人気を集めている理由

世の中には数多くの産業用ドローンや高性能ドローンが溢れていますが、なぜ高額にも関わらずMatriceシリーズが高い人気を誇っているのでしょうか。このシリーズがプロに選ばれる理由をいくつかご紹介していきます。
 
 

5-1.ジンバルカメラがカスタマイズ可能

 
一般的なドローンでは、機体からカメラを取り外すことはできません。業務でも広く利用されてきたPhantomシリーズや、業務利用に特化した折り畳み式のMavic 2 Enterpriseでも、すでに搭載されているカメラをそのまま使用することになります。
 
一方で、Matriceシリーズはどれもジンバルカメラのカスタマイズが可能になっているため、業務の幅が格段に広がります。カメラのためにわざわざドローンを複数台所有しなくて済むというのは、非常に大きなメリットです。
 
 
 
なお、搭載可能なZenmuseシリーズから、主力のジンバルカメラをご紹介します。
 
X4S X5S  X7 XT2 Z30
特徴 2,000万画素、最大感度ISO12,800、4K撮影に対応 2,080万画素の静止画、5.2K CinemaDNG撮影が可能 6K CinemaDNGと5.2K Apple ProRes対応の映像制作専用カメラ 高度放射測定サーマルセンサーと4Kビジュアルセンサーを搭載 総合倍率最大180倍のパワフルなズームカメラ
販売価格 オープン価格 252,593円 オープン価格 オープン価格 オープン価格
寸法 125×100×80 mm 140×98×132 mm 151×108×132 mm 25 mm レンズ装着時:123.7×112.6×127.1 mm 152×137×61 mm
​重量 253 g 461 g 449 g - 556 g
​センサー CMOS、1" 有効画素数:2,000万画素 CMOS、4/3” 有効画素数:2,080万画素 センサーサイズ(静止画): 23.5×15.7 mm、センサーサイズ(最大動画録画領域): 23.5×12.5 mm、有効画素数: 24MP 1/1.7インチCMOS 有効画素数:12 MP CMOS、1 / 2.8 インチ有効ピクセル:2.13 M
静止画フォーマット DNG, JPEG, DNG+JPEG DNG,JPEG,DNG+JPEG ​DJI CINESSD: DNG、micro SD: DNG、JEPG、DNG+JEPG JPEG、TIFF、R-JPEG JPEG
​動画フォーマット MOV, MP4 RAW,ProRes,MOV,MP4 CINESSD: Cinema-DNG、ProRes microSD: MOV、MP4 8ビット :MOV、MP4 14ビット :TIFFシーケンス、 SEQ MOV、MP4
​動画フォーマット MOV, MP4 RAW,ProRes,MOV,MP4 CINESSD: Cinema-DNG、ProRes microSD: MOV、MP4 8ビット :MOV、MP4 14ビット :TIFFシーケンス、 SEQ MOV、MP4
露出モード オート、マニュアル、シャッタースピード優先、絞り優先 オート、マニュアル、シャッタースピード優先、絞り優先 オート、マニュアル、シャッタースピード優先 - オート、マニュアル、シャッター優先、絞り優先
露出補正 ±3.0 (1/3 ステップ) ±3.0 (1/3 ステップ) 3.0(1/3ステップ) - ±2.3(1/3ステップ)
シャッタースピード メカニカルシャッタースピード:8~1/2000s 電子シャッタースピード:1/2000~1/8000s 電子シャッタースピード:8~1/8000s 電子シャッタースピード: 1/8000~8秒 メカニカルシャッタースビード: 1/1000~8秒(DJI DL-S 16mm F2.8 ND ASPHには対応していません) - 電子シャッタースピード: 1/30~1/6000秒
ホワイトバランス オート、晴天、曇り、白熱灯、ネオン、 カスタム (2000~10000K) ​オート、晴天、曇り、白熱灯 ネオン、カスタム (2000~10000K) オート、晴天、曇り、白熱灯、ネオン、カスタム(2000 K ~ 10000 K)

-

 

オート、晴れ、曇り、白熱灯、カスタム(2000K〜10000K)
​ISOレンジ 100~6400 (動画) 100~12800 (静止画) 100~6400 (動画) 100~25600 (静止画) 写真: 100~25600 動画: 100~1600(EIモード有効)、100~6400(EIモード無効) - -
 

5-2.突然の降雨にも対応できる堅牢設計

 
Matriceシリーズのスペックを見ると【保護等級:IP43】となっていますが、4という数字が人体・固形物体に対する保護の等級を表しており、3が水の侵入に対する保護の等級を指します。
 
  1. 人体・固形物体に対する保護 4等級:直径1.0mm以上のワイヤーや固形物体が内部に侵入しない
  2. 水の侵入に対する保護 3等級:垂直より左右60°以内からの降雨によって有害な影響を受けない
 
完全防水というわけではありませんが、小雨が降ってきた程度であれば、慌てて着陸させる必要がないということですね。
 
 
 
 

5-3.過酷な環境での飛行を想定した自己発熱機能

 
冬場の撮影に重宝される、自己発熱機能が備わっているのも大きなポイントです。バッテリーの温度が下がったまま飛行していると、最悪の場合機体の墜落も発生しかねません。一本ずつカイロで温めて飛行させて様子をみて・・・という手間が省けるのは嬉しいですね。
 
動作環境温度は、驚異の-20℃ ~ 50℃となっています。
 
 

6.まとめ

初めてドローンを導入しようか検討している段階では、少し足踏みしてしまう価格かもしれませんが、活用事例を見てみると無限の可能性を感じますよね。

 
いきなり購入するにはハードルが高いと感じる方には、まずはレンタルでの利用がおすすめです!

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監修者

監修者の写真

森本 洸生(もりもと こうき)

株式会社 drone supply &control (ドローンエバンジェリスト)

<略歴>

中学生の時に国土交通省の全国包括申請許可取得し、鹿やイノシシによる農作物被害を守る害虫駆除のプロジェクトに参画するなど、若い世代のドローン第一人者。現在では様々なドローン事業に参画するなど多方面で活躍中。

<所有する資格>

  • DJI CAMPスペシャリスト
  • DJI CAMPインストラクター
  • DJI CAMP ENTERPRISEインストラクター
  • 無人航空従事者試験1級
  • CRPI公認指導員
  • 総飛行時間400時間以上
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